冬より怖い夏型結露には調湿可変気密シートで対策を

結露と聞くと冬場を想像する方が多いのではないでしょうか。
寒い日に暖房を入れると、窓ガラスに水滴が付くという話はよくあります。
でも本当に怖いのは、冬場の結露よりも夏場の結露です。

夏に結露なんて見たことないけど?
そうなんです。
冬場の結露は目に見える部分で発生するのに対して、夏場の結露は住宅の床下・基礎部分や壁の内部で発生するのが特徴です。

今回はそんな怖〜い夏型結露について綴っていきます。

01冬場の結露

例えば、冬場にこのような環境があったとします。
室温 20度 湿度 50% (加湿器使用)
外気  5度 湿度 30%

湿度は性質上、高い方から低い方へ移動するので、このような環境の場合は室内の湿度は室外へ逃げようとします。
クロスの隙間などから室内の湿気は壁内に入ります。
そうすると室内の温かい空気と室外の冷たい空気が壁内でぶつかると、どうなると思いますか?
私たちの見えない部分で結露は発生し、柱や土台などの構造体は濡れて壁内がカビだらけ…なんてことも。
冬場の壁内結露対策として大体の会社さんでは断熱材と石膏ボードの間に気密シートを貼り、湿気が壁内へ入らないようにしています。

しかし、冬場の壁内結露対策をやったが為の落とし穴もあるんです。
それが夏場の壁内結露です。

02夏場の結露

例えば、夏場にこのような環境があったとします。
室温 28度 湿度50%(エアコン除湿使用)
外気 35度 湿度70%

湿度の性質上、このような環境の場合は室外の湿気は室内へ入ろうとします。
そうすると室内はムシムシ過ごしにくくなり、エアコンの除湿機能を使いますよね。

しかし、冬場の壁内結露対策のために壁内には気密シートが貼ってあります。
気密シートは、ポリエチレンからできているので水分や湿気を通しません。
ベニヤ合板の透湿抵抗を10とすると、ポリエチレンはその約40倍ほど。
※透湿抵抗とは、材料内の湿気がどれほど移動しにくいのかを表している係数のこと。
透湿抵抗10ですら湿気は通りにくいと言われています。(透湿抵抗値は低ければ低いほど湿気が通りやすい。)
ベニヤ合板は接着剤が使用されているため、使用するのはあまりよくないとも言われています。

また、ベニヤ合板の表面はロシア産のカラマツでウクライナショックにより価格高騰・輸入自体難しくなっています。
代用品として、透湿抵抗が2〜3ほどの吉野石膏さんのタイガーEXボードやダイケンさんのダイライトMS、アイカ産業さんのモイスTMは比較的安価で採用されています。
今はそれらの湿気が通りやすい建材が使われていることが多いと思ってください。

今は知らず知らずのうちに、湿気が通りやすい建材が使われているので壁内に容赦無く湿気が入ってきます。
つまり、室外から入ってきた湿気は壁内に侵入し、気密シート表面にて結露します。
気密シートに付着した水滴は土台・柱を濡らし、構造体や断熱材にカビを発生させる原因になっています。


出典:株式会社 グリーンフィールド

壁内の断熱材がグラスウールならば、水分により著しく断熱性能が低下しているかもしれません。

これが、夏型結露です。
気密シートは冬場の住宅にとっては大きな効果を発揮しますが、夏場は逆に悪い働きをしてしまいます。


出典:株式会社 グリーンフィールド

03調湿可変気密シートで夏型結露対策

そこで、今注目されているのが夏型結露対策を考慮した「調湿可変気密シート」です。

どのような働きをするかと言いますと、湿度の高い・低いにより建材の分子が可変します。
湿気が少ない場合は、湿気が通る隙間はなく防湿性能を発揮します。
また、湿気が多い場合は、分子が結合し湿気を通す隙間ができます。


出典:株式会社 グリーンフィールド

この働きにより、冬場は防湿、夏場は透湿してくれます。
年間通して気密性はしっかりと確保しながら、常時壁内は乾燥状態になるので住宅寿命は伸び、健康にも安心です。


出典:株式会社 グリーンフィールド

一般的な気密シートに比べて、価格は6〜7倍と高価なのが少しネックですが…。

04水村建築設計の考え

2009年に国で出した住宅指針「長期優良住宅」には夏型結露に関する決まりなどはありません。
(長期優良住宅は、去年「長期使用構造等である旨の確認書」へと名称変更しています。)
本当に長持ちする住宅を建てたいのであれば、壁内を乾燥状態にする必要があると思います。

「国指針の住宅なら長持ちするよね」と長期優良住宅を取得しても、残念ながら壁内結露が起こっている事実もあります。
私個人としては、トイレなど交換可能な住宅設備機器のグレードを下げてでも、見えない本当に大切な部分にお金をかけた方が住宅は長持ちすると考えます。

近年は気温が極めて高く、室外との温度差が激しくなり結露もしやすくなっています。 
下手な高気密・高断熱住宅は壁内がカビだらけ…という可能性も無きにしも非ずです。

※一部の会社さんでは、定常計算をして壁内結露が起こらないことを確認した上で、調湿可変気密シートは使用しない場合もあります。

将来住宅を建てたい方は、担当者さんに壁内結露に関することをぜひ聞いてみてくださいね。
調湿可変気密シートや断熱に関するご質問やお悩みは水村建築設計までお気軽にどうぞ。

今回の水村的キーワード:夏型結露 結露計算 壁内結露